プロダクト
アプリケーション
Author: George Stonadge
Last updated: 27 Jul 2026
Key Message : BEXは、凹凸が大きく通常のEDSでは難しい故障解析を可能にし、重要な根本原因証拠を持つ破壊面そのものの組成解析を可能にします。
ターボチャージャータービンブレードは極度の機械的・熱負荷下で動作し、急速加速時に600MPaを超える遠心応力と1000°Cを超える温度を経験します[1,2]。これらの条件下での塑性変形、亀裂の発生、ブレード損失を防ぐためには、タービン材料は高い引張強度と、疲労および時間依存クリープに対する強い抵抗性を兼ね備えなければなりません。これらの要件により、ニッケル系スーパーアロイの使用が一般的に促されており[1]、多くの材料が許容できないほど軟化、酸化、クリープを行う高温でも強度と微細構造の安定性を保ちます[1]。 しかし、部品の故障が期待される使用寿命終了前に発生した場合、原因の特定、再発防止、そして全体のフリート信頼性を守るために、タイムリーかつ体系的な故障分析が不可欠です。
図1- A) SEMステージ上にそのまま設置されたタービンホイールの画像。B) タービンホイール上のターボブレード破損個所の画像。C) Fe-Al-Siコーティングが施されたNi-Cr合金の、応力破壊を示す低倍率BEX画像。
本ケーススタディでは、ターボチャージャーブレードの故障原因の分析における、これまでとは異なるアプローチを提示します。ここでは、走査型電子顕微鏡(SEM)における後方散乱電子およびX線(BEX)検出技術を用いて、その対象の大きさや不均一な試料表面からの凹凸の影響によって、従来のEDSでは得ることができない高品質な元素マップを作成しています(図1)。ポールピースの下に設置されたBEXは、「鳥瞰図」の立ち位置を提供し、波打つ断面からの影響を軽減します。これにより、試料を加工せずに故障個所の一括分析ができ(図1)、重要な証拠を保存しつつ、分析時間や試料調製に関する不確実性の削減が可能です。
目視および二次電子によるSEM画像(図1Bおよび2C)により、観察された破壊形態は表面からの疲労亀裂と一致し、その後の繰り返し荷重での一定した亀裂の進展を示しています。亀裂の位置と伝搬特性は、繰り返し熱および機械的荷重にさらされるタービンブレードに典型的であり、局所的な応力集中が段階的な疲労損傷の蓄積を促進します。しかし本件では、期待される耐用年数よりかなり早く故障が発生しており、目視検査では明らかでない追加の要因が部品の性能を低下させた可能性があります。
そこで、このターボチャージャーはそのままSEMで直接検査することとし、加速電圧20kV、プローブ電流5nA、WD25 mm (対象の顕著な表面構造を考慮して選択)で分析されました(図1A)。画像化はUnity BEX検出器とUltim Max ∞ 170エネルギー分散X線(EDS)検出器の両方を用いて実施されました。
図2- A) 500倍倍率で取得した破断面のBEX画像。10μm程度の構造偏析がはっきりと見られます。B) BEX 1500倍で収集した破断面画像は、サブミクロンのNb-Ti介在物分布との関連性を明らかにします。C) 破断面の二次電子像、見かけの層状分布が元素の偏析と相関していることに注目してください。
破断面から500倍および1500倍で取得したBEX画像(図2Aおよび2B)は、破断面全体で明らかな組成コントラストをもち、これはTi-Nbの元素分布が不均一であることを示しています。この特徴は対応する二次電子画像(図2C)で観察される層別破壊形態にも現れます。
同じ領域から同時に取得されたEDSデータ(図2D)では、顕著な凹凸の影響と信号強度の低下が見られ、根本原因となる微細構造の解釈を困難にします。
ニッケル系超合金ではNbおよびTiリッチな介在物の存在は予期されますが、この例では脆いNb葉相の均質化が不完全であることが示されています[3,4]。このような微細構造はブレード構造に恒久的な弱点を生み出し[3,4]、破断の起始および伝播の場となり、早期部品破損の原因となる可能性があります。
試料を破壊することのない故障解析は、部品サイズや顕著な表面構造などにより、従来のSEM-EDSでの分析に大きな制約をあたえます。検出器信号を制限、あるいは阻害し、分析対象となる領域から得られるはずの組成情報の信頼度を低下させます。この例は、BEXによるSEMの故障解析において、大きくかつ形状が不規則な対象に対しても時間のかかる試料調製なしに、またこれまでの手法で発生していた重要な対象を破損や消失なく保持できることを示しています。
1. Dolton (2006): HTi Magazine, Cummins Turbo Tech, Ed. 7, 7-8.
2. Sellers (2018): Proc. 65th ICI Tech. Conf., Investment Casting Inst.
3. Evangeline et al. (2020): Arab. J. Sci. Eng., 45, 9685–9698
4. Zhang et al. (2022): Compos. Part B: Eng., 239, 109994.
■オンデマンド配信中
Advanced EDS Elemental Analysis in SEM using BEX: Materials Science and Batteries
本ウェビナー(英語/日本語字幕付)では、機能性材料やバッテリー正極活物質を含む実際のアプリケーション例を通じて、その有効性をご紹介します。
ウェビナーを見る
■アプリケーションノート
Rapid Failure Analysis of Structural Materials Using SEM-BEX: Ni-alloy Brittle Failure Case Study
航空宇宙、自動車、防衛など安全性と性能が最重要となる産業では、引張荷重下での材料挙動を理解することが極めて重要です。引張強度試験は材料の完全性と性能に関する洞察を提供し、エンジニアが故障を防ぎ信頼性を確保するのに役立ちます。
しかし、実際のサンプルは高品質なエネルギー分散型X線分光(EDS)に最適な条件で存在することは稀です。破壊面は本質的に不均一であり、平坦で磨かれた試料に依存する従来のEDSワークフローには適さないことが多いです。ここでUnity Backscattered Electron and X線(BEX)検出器が優れており、ポールピース下の形状で大きく非理想的に準備されていない試料の高感度解析を提供します。
アプリケーションノート(英語)のつづきを読む
■BEX – Backscattered Electron and X-ray
BEXはSEMにおける先駆的な分析技術です。反射電子(Backscattered Electron)とX線(X-ray)-BEX- を1つの装置で同時に収集し、画像化します。業界初の画期的な技術として、この2つの技術の長所を統合し、解析時間を大幅に短縮します。
詳しくはこちら