オックスフォード・インストゥルメンツー事業部ページ
拡張

Case Study|導入事例

帝人株式会社

帝人株式会社

産業界で使えるまで進化したAFM

 - 正確な測定結果と専門性に優れたサポートが導入の決め手に

企業理念に「Quality of Life」の向上を掲げる帝人株式会社。この企業の革新的なソリューションは、「マテリアル事業」と「ヘルスケア事業」の2大事業領域に、「繊維・製品事業」と「IT事業」を加えた4つの事業領域に提供されています。材料開発競争が激しいマテリアルやヘルスケアを中心に、分析技術を強化し続けている帝人株式会社は、2022年5月にオックスフォード・インストゥルメンツの原子間力顕微鏡「Jupiter XR」を岩国開発センターに導入しました。出張が制限されたコロナ禍で、AFM(原子間力顕微鏡)を扱う19社の中から選び抜いたJupiter XRについて、帝人株式会社 構造解析センターの永阪氏と栗本氏にお伺いしました。

(敬称略)

帝人株式会社
構造解析センター 岩国駐在
統轄
永阪 文惣(ながさか ぶんそう)

帝人株式会社
構造解析センター 岩国駐在
栗本 博文(くりもと ひろふみ)


帝人株式会社
https://www.teijin.co.jp/

【導入製品】大型試料対応原子間力顕微鏡「Jupiter XR(ジュピター エックスアール)」
【導入時期】2022年5月
【導入台数】1台
【導入前の課題】繊維など曲率をもつ表面計測、ナノスケールの物性評価
【導入後のメリット】局所弾性率を正確に測定することにより、ポリマーアロイの処理条件の最適化に成功

オックスフォード・インストゥルメンツのAFM「Jupiter XR」を、どのような用途に使用されていますか。

【永阪 氏】現在、私たち帝人株式会社が注力しているヘルスケア事業領域では医薬品や医療用材料、またマテリアル事業領域ではアラミド繊維や炭素繊維といった高分子や無機材料を中心に、開発や研究段階の幅広いサンプル、試作品の分析・評価に活用しています。

帝人が研究開発した多数の製品
(岩国開発センターのロビーにて展示)

今回のAFM導入に際し、どのような課題があったのでしょうか。

【永阪 氏】古い話から始まりますが、今から20年以上前、現在の東京研究センター(日野市)にAFMを1台導入しました。当時、AFMを製品として販売している会社は1社しかなく、その1社のAFMを導入したのですが、測定に大変苦労しました。導入時は物珍しさもあり、AFMによる測定は茶色い表面形状像と位相像が得られて興味深いものでしたが、表面の平坦性がすごく求められ、また振動に弱く、測定にも時間がかかり、実サンプルを測定しようと試みるとそのほとんどが測定できませんでした。またその頃、低真空SEMの技術が向上してきたこともあり、形状像を得る目的には電子顕微鏡を使用するのが最適の方法でした。形状プラス反射や透過の電子像のコントラストでポリマー材料の結晶質や非晶質の部分の解釈ができていたため、当時AFMは期待していたほど使えないという認識でした。

そして、その頃から私たちが扱っている繊維、その1本の表面の凹凸を評価しなければならないという課題を抱えていました。繊維なので、当然、曲率があります。その曲率がある表面の凹凸の測定は、共焦点レーザー顕微鏡でも非常に難しいものです。したがって、それを測定する手段の一つは、AFMと考えていました。

当社のAFMを知った経緯、そして選定理由を教えてください。

【永阪 氏】AFMについて、コロナ前からインターネットで情報収集をしていました。この頃になるとAFMを扱っている会社は数多く検索できました。そして、AFMメーカーがどのような技術を持ち、どのような方向性で開発を進めているのか、表面ラフネス測定を重要視しているのか、それとも半導体か、または非常に柔らかい高分子を測定できるような装置を開発しているのはどの会社かなど、撤退や買収のあったところを含めて色々調べました。

このようにAFMを調査している最中、2018年のJASIS で、オックスフォード・インストゥルメンツ社の展示ブースに偶然立ち寄りました。実は、私自身、学生時代から超電導マグネットを使用した核磁気共鳴装置を扱っていたこともあり、オックスフォードの社名はもちろん、クライオスタットについてよく知っていました。しかし、オックスフォードがAFMを取り扱っていることはJASISで初めて知りました。ブーススタッフから、AFMのZレンジ、高さ方向の稼働域が従来のよりも大きくなっていることを聞き、それならば繊維表面を測定評価できるかもしれないと思い、オックスフォードを含めたAFMの調査をさらに進めました。また、インターネットでAFMの製品開発に成功した会社からの技術的な流れがオックスフォードにもあるということが判明し、オックスフォードも選定候補の1つとなりました。最終的には19社を調査し、デモは3社に依頼しました。残念ながらその内の1社は早い段階で候補から消えましたので、最終候補は、オックスフォードともう1社の2社になりました。

デモは、同じ時期に、同じ条件で、同じサンプルから切り出しているポリマーアロイを、クライオイオンミリングで断面作製したサンプルを依頼しました。ポリアミドとエポキシが相分離しているポリマーアロイの断面です。その形状像と硬さの分布を示す弾性率像が、正しく評価できるかというのがポイントでした。最初に某社がデータを提出してくれたのですが、表面形状にノイズがあり、弾性率像は硬い方と柔らかい方が反転しており「従来AFMの延長上」という印象でした。某社のコメントは、「サンプルの表面の凹凸があまりにも大きすぎるので、このサンプルはダメです」ということでした。やはりAFMでは難しいのかと、その時は落胆してしまいました。

一方、オックスフォードの場合は、某社と同様にコロナ禍で出張ができなかったためサンプルを送付しましたが、ウェブカメラで色々と見せていただきながら、技術的な点を詳しく聞くことができました。つまり、オンライン・デモという形で調査を順調に進めることができたのです。デモ結果は、オックスフォードのアプリ担当者からデータの提出と説明をしてもらいました。得られた弾性率像において、それぞれの硬いポリマーと柔らかいポリマーの弾性率は、間違いなく、正しい値を示していました。AFM自体に、正直あまり期待していなかったところから全く別次元のデータが送られてきたので、「AFMは進化した」というのが率直な感想でした。実のところ、ポリマーアロイの断面作製した担当者は時間がなかったために最後の仕上げができなかったので、「これでもデータが取れたらすごいだろう」と思っていたのですが、提出されたデータの質の高さに驚きました。測定結果のノイズレベルが全く違います。さらにカンチレバーの光熱励振blueDriveが市販されているのは、唯一オックスフォードだけですので、この点でもオックスフォードに決めても良いと判断しました。

導入後のAFM「Jupiter XR」はいかがですか。

【永阪 氏】納入したJupiter XRで、デモしたデータを、もう一度私たち自身で測定できるかということが大事な点でした。結果は、ほぼAFMビギナーに近い弊社の栗本でも測定できました。もちろんオックスフォードから的確な指導で導いていただいたという経緯はありますが、ビギナーでも正しい測定ができる装置、やはり使える装置だと確信し、この時は本当に導入して良かったと思いました。

【栗本 氏】私は他社製のAFMを少しだけ使用したことがあります。その時使用した従来のAFMに比べると、Jupiter XRは短時間で像が取得でき、再現性もあると感じています。例えば、繊維の表面を測定しようとすると、以前は何となく形態が見えてきたという状態でしたが、Jupiter XRを使用すると表面の細かな形状を確認することができるので、AFMの進化を感じています。カンチレバーのチューニングも非常に楽になり、1回の分析に要する時間も半分、つまり約2倍のスピードで分析を終えられるようになっていると思います。稼働率も高く、ほぼ毎日フル稼働しています。

オックスフォード・インストゥルメンツ社製大型試料対応原子間力顕微鏡「Jupiter XR」(帝人株式会社岩国開発センターの形態表面観察室にて)

オックスフォード・インストゥルメンツ社製
大型試料対応原子間力顕微鏡「Jupiter XR」
(帝人株式会社岩国開発センターの形態表面観察室にて)

上位機種のAFMを使う機会があったと聞いていますが、どのような印象でしたか。

【永阪氏】Jupiter XR導入前に上位機種のCypher(サイファー)をレンタルしました。Cypherを使用してみて、測定しやすく、すごい装置だというのがよくわかりました。特に振動対策が格段に良かったです。防振台なしの状態でマイカの原子像を取得しながら、Cypherの横でジャンプしても全然ノイズが入らないので、もう全く違うと思いました。

Jupiter XRはCypherよりも大きなサンプルを測ることができて、Zレンジもあるので、今の私たちにはJupiter XRが必要ですが、2機種のAFMを使用し、共通して言えるのは、オックスフォードのAFMは正確な測定ができるような装置の設計思想に基づいているということでした。実はCypherも欲しくなっています。Cypherでないと取れないものも一部あることがわかりました。Jupiter XRを使用している今、Cypherの良さを感じています。

弊社が注目しているヘルスケア事業の中で、再生医療関係の材料は注力しているものの一つです。生体、細胞の適合性を評価するために、バッファー液中の基板上の水の状態も考慮し、最表面のみ細胞レベルで親和性が高いような材料の開発を考えています。そのような場合に、Cypherが特に有効であろうと考えています。

今後のAFMに期待することは、どのようなことでしょうか。

【永阪 氏】先ずJupiter XRの環境制御オプションの充実です。in situ実験など環境制御を行って、実際のサンプルが使用される環境に可能な限り近い状態での表面の特性評価を行っていきたいと思っています。サンプルを固定した後、真空にすることもなく、また導電処理もせず、すぐにナノオーダーの像が取得できて、さらに物性の評価ができるのはAFMしかないと思います。そして、NVセンターのナノダイヤモンドプローブを使った局所磁気共鳴や赤外などの分光学的な手法と合わせてもっと発展してほしいと思っています。私も、“AFMは使い物にならないという記憶が払拭されたひとり”ですが、より多くの人に“今のAFMは昔のものと違う”ということを認知していただいて、さらに良い装置の開発につながっていけばいいと考えております。まだまだAFMは普及しているとは言えません。今、その始まりに入ってきた、まだ入口のところかと思います。

そして、オックスフォードのアプリケーションの方々はすごく優秀だと思います。抜群です。私たちも、学生時代から扱っている装置であれば測定に問題はないかと思いますが、業界毎の専門用語が違うため専門性の高いアプリケーションの方が指導してくれるのは非常に助かります。残念ながら弊社ではAFMを学生時代から使用しているエキスパートがいないため、AFMを導入する時はメーカーの方からの技術サポートが期待できるかということも重要な選定の一つと考えていました。また、AFM測定で重要な針やプローブは、どれを選んでいいか分からないくらい数多く売られています。オックスフォードでは、専門スタッフからこういう測定のためにはこのプローブを使うと大体のストライクゾーンに入りますよと、的確にアドバイスしてもらえます。やはり、装置を導入してからの技術サポートは各社異なっていますが、最後は人(ひと)であると思っています。大げさかもしれませんが、今回担当してくれたオックスフォードのアプリケーションの方がいなかったら購入していなかったかもしれません。アプリ担当者のおかげです。今回、オックスフォードの装置を導入して、非常に感動しています。すっかりオックスフォードのファンになりました。

インタビューご回答者のプロフィール(敬称略)

永阪 文惣(ながさか ぶんそう)

帝人株式会社
構造解析センター 岩国駐在
統轄

1994年 帝人株式会社 入社
これまで固体NMR(核磁気共鳴)、陽電子消滅、放射光散乱などを用いた解析研究に従事。現在に至る。
理学博士


栗本 博文(くりもと ひろふみ)

帝人株式会社
構造解析センター 岩国駐在

1998年 帝人株式会社 入社
これまでX線回折、放射光散乱を用いた材料解析に従事。現在に至る。

(取材:2022年9月)
※記事の内容は取材時の情報です。

関連情報

お問い合わせ/ニュースレター登録

オックスフォード・インストゥルメンツのAFMについて、詳しい情報や当社専門の製品担当とのご相談をご希望の場合は下記よりお問い合わせください。

お問い合わせ

当社の最新技術を用いた製品やアプリケーションのご紹介、またウェビナー、展示会等の最新情報を「OI Newsletter」としてお客様にメール配信しています。ぜひ下記よりご登録ください。

ニュースレター登録
オックスフォード・インストゥルメンツお問い合わせフォーム