August 2, 2023

WITec Paper Award 2023 が優れた論文を表彰

ポーランド、フランス、イタリアの研究者らが、細胞生物学、バイオミネラリゼーション、フォトニクスの分野で受賞

The WITec Paper Awards 2023 は、細胞生物学、バイオミネラリゼーション、フォトニックデバイスの開発におけるそれぞれの研究に対して、ポーランド、フランス、イタリアの科学者らに贈られました。このコンペティションは、WITecの顕微鏡で得られた結果を含む科学論文を年間3件表彰するもので、審査員は100件以上の応募論文の中から優勝候補を選出しました。WITecは受賞者の皆様を祝福するとともに、魅力的な論文を送ってくださった参加者の皆様に感謝いたします。

  • 論文賞 金賞 : Ewa Stanek, Marta Z. Pacia, Agnieszka Kaczor, Krzysztof Czamara (2022) The distinct phenotype of primary adipocytes and adipocytes derived from stem cells of white adipose tissue as assessed by Raman and fluorescence imaging. Cellular and Molecular Life Sciences 79: 383. DOI: 10.1007/s00018-022-04391-2
    「白色脂肪組織の初代脂肪細胞および幹細胞由来脂肪細胞の異なる表現型のラマンおよび蛍光イメージングによる評価」
  • 論文賞 銀賞 : Aïcha Badou, Sylvain Pont, Stéphanie Auzoux-Bordenave, Morgane Lebreton, Jean-François Bardeau (2022) New insight on spatial localization and microstructures of calcite-aragonite interfaces in adult shell of Haliotis tuberculata: Investigations of wild and farmed abalones by FTIR and Raman mapping. Journal of Structural Biology 214: 107854. DOI: 10.1016/j.jsb.2022.107854
    Haliotis tuberculata の成体殻における方解石-アラゴナイト界面の空間的局在と微細構造に関する新たな知見: FTIRおよびラマン・マッピングによる野生アワビと養殖アワビの調査」
  • 論文賞 銅賞 : Stefano L. Oscurato, Francesco Reda, Marcella Salvatore, Fabio Borbone, Pasqualino Maddalena, Antonio Ambrosio (2022) Shapeshifting diffractive optical devices. Laser & Photonics Reviews 16: 2100514. DOI: 10.1002/lpor.202100514
    「形状変化する回折光学素子」

過去の受賞論文のリストは、WITec Paper Award の公式ウェブサイトをご覧ください。

論文賞 金賞:細胞発生のキャラクタリゼーション

肥満関連の健康問題が世界的に増加するにつれ、脂肪組織に対する研究者の関心が高まっています。生化学的プロセスのin vitro研究には、in vivoの状態にできるだけ近いモデル細胞株が必要であり、幹細胞からモデル脂肪細胞を得るためのさまざまなプロトコルが存在します。ヤギェウォ実験治療センター (Jagiellonian Centre for Experimental Therapeutics) およびヤギェウォ大学化学学部 (Faculty of Chemistry of the Jagiellonian University)(ポーランド、クラクフ)のEwa Stanek氏と共同研究者のMarta Z. Pacia氏、Agnieszka Kaczor氏およびKrzysztof Czamara氏は、初代脂肪細胞と幹細胞由来脂肪細胞の比較で、論文賞 2023 金賞を受賞しました。著者らは、ラマンイメージングと蛍光イメージングを用いて、褐色脂肪組織と白色脂肪組織由来の脂肪細胞の成熟をキャラクタライズしました。2Dおよび3Dラマン顕微鏡により、脂肪生成の過程で起こる細胞形態の変化と脂質、DNA、タンパク質の分布が可視化されました。脂質滴の形成が観察され、ラマンスペクトル分析により脂質の不飽和度が定量化されました。この結果を比較したところ、異なる組織型から採取した幹細胞由来の脂肪細胞間に違いは見られませんでした。しかし、初代脂肪細胞と幹細胞由来脂肪細胞では、化学組成に違いが見られました。「私たちの研究は、既存のモデル系の限界と、選択したプロトコルが実験結果に影響を与える可能性があることを明らかにしました。」と Ewa Stanek 氏は述べています。「これらの知見は、代謝研究や組織工学の応用に関連するものです。」

WITec 論文賞 2023 金賞を受賞された皆様
WITec 論文賞 金賞を受賞された皆様(左から2人目より右へ)、ヤギェウォ実験治療学センター (Jagiellonian Centre for Experimental Therapeutics) およびヤギェウォ大学化学部(Faculty of Chemistry of the Jagiellonian University)(ポーランド、クラクフ)のEwa Stanek氏、Agnieszka Kaczor氏、Marta Pacia氏およびKrzysztof Czamara氏は、WITec のフランス・ディレクターおよびポーランド・マネージャのMaxime Tchaya氏(左)から賞状を授与されました。
論文賞 銀賞:アワビ殻のバイオミネラリゼーション

技術応用のための新素材は、自然から着想を得ることが多く、研究者はバイオマテリアルがどのように生成されるかを理解しようと努めています。論文賞 2023 銀賞は、フランス国立自然史博物館(MNHN, Station marine de Concarneau-DGD-REVE)のエンジニアであるAïcha Badou博士と、共同研究者であるMNHNおよびル・マン大学 (Le Mans Université) のSylvain Pont氏、Stéphanie Auzoux-Bordenave氏、Morgane Lebreton氏およびJean-François Bardeau氏らによって発表された、アワビ殻のバイオミネラリゼーション過程を調査した研究です。著者らは、ラマンイメージングとフーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いて、アワビ殻中の炭酸カルシウム(CaCO3)多形アラゴナイトおよびカルサイトの空間分布を調査しました。ラマンスペクトルの詳細な分析により、同じ多形の領域内でも秩序度の異なるゾーンが識別されました。さらに、走査電子顕微鏡 (SEM) で貝殻の微細構造を分析し、エネルギー分散型X線分光法(EDS)で異なるゾーンに含まれる微量元素を検出しました。その結果に基づいて著者らは、貝殻の厚さと長さの成長方向に関する微細構造と層組成のモデルを提案しました。「私たちのモデルは、過去に報告された貝殻構造に関するさまざまな観察結果を説明するものです。この調査結果は、比較可能性を確保するために、正確な試料記録の必要性を強調しています」とBadou博士は述べています。今後の研究では、成長パターンに対する環境要因の影響を調査する予定です。

WITec 論文賞 2023 銀賞を受賞された皆様
国立自然史博物館(MNHN)、コンカルノー海洋研究所(Station marine de Concarneau-DGD-REVE)のエンジニアであるAïcha Badou博士(中央)と、ル・マン大学分子材料研究所(IMMM、UMR CNRS番号6283)のCNRS研究ディレクターであるJean-François Bardeau氏(右)。WITecのフランス・ディレクターおよびポーランド・マネジャーのMaxime Tchaya氏(左)から論文賞 銀賞の賞状を授与されました。
論文賞 銅賞:変形平面光学素子の開発

微生物学から天文学まで、イメージング・システムはさまざまな研究分野で重要なツールとなっています。その用途に応じて、光を構造化し操作するためのさまざまな光学素子が含まれています。イタリア・ナポリ大学(University of Naples)のStefano L. Oscurato氏は、共同研究者のFrancesco Reda氏、Marcella Salvatore氏、Fabio Borbone氏、Pasqualino Maddalena氏およびAntonio Ambrosio氏とともに行った形状変化光学素子に関する研究で、論文賞 2023 銅賞を受賞しました。著者らは、入射光によって希望する形態に成形できる光応答性ポリマーを用いて、レンズや回折格子などの平面回折光学素子を作製しました。この形態が素子の光学特性を決定し、原子間力顕微鏡と走査電子顕微鏡によって検証されました。特注のホログラフィック・セットアップによりポリマー表面を形成し、その結果得られる回折特性をリアルタイムで可視化することができました。同じポリマー表面は、ビーム経路内に留めたまま、繰り返し形状を変えることができます。「光学素子を物理的に交換したり移動したりせずにイメージングパラメータを変更できる機能が役立つアプリケーションは多い」とOscurato博士はコメントしています。論文に記述されている例には、可変回折特性を持つ回折格子や、顕微鏡の倍率を変えるのに役立つ焦点距離調整可能な回折レンズなどがあります。

WITec 論文賞 2023 銅賞を受賞された皆様
賞状を受け取るWITec論文賞 銅賞を受賞された皆様。左から:イタリア・ナポリ・フェデリコ2世大学(University of Naples Federico II)のI Komang Januariyasa氏、Francesco Reda氏、Stefano Oscurato氏、WITec代表のDiego Vitaglione氏(Quantum Design Italyマネージングディレクター)、イタリア・ナポリ・フェデリコ2世大学のPasqualino Maddalena氏、Marcella Salvatore氏およびFabio Borbone氏。
WITec Paper Award 2024 の応募受付を開始しました

WITec審査委員会は WITec Paper Award 2024 への多くの優れた論文のご応募をお待ちしております。対象論文は、2023年に査読付きジャーナルに掲載されたもの(印刷またはオンライン)で、WITecの装置を用いて得られた結果を含むものです。論文は2024年1月31日までにPDFファイルで papers@WITec.de へお送りください。

WITec(ビーテック)について

WITec は、3D ラマンイメージングと相関顕微鏡のパイオニアであり、スピード、感度、分解能に妥協のない製品ラインナップで、業界をリードし続けています。ラマン顕微鏡、AFM 顕微鏡、SNOM 顕微鏡、およびビーテックが開発した Raman-SEM(RISE)装置は、拡張可能なモジュール式のハードウェアおよびソフトウェアにより、化学および構造特性評価において特定の課題に合わせてカスタマイズすることが可能となっています。研究、開発、生産はドイツ・ウルム市のビーテック本社(WITec GmbH)で行われており、ビーテック製品の販売・サポートネットワークは世界のあらゆる地域で確立されています。2021年9月、ビーテックはオックスフォード・インストゥルメンツ・グループの一員となり、ラマン顕微鏡の技術的リーダーシップをその幅広い事業ポートフォリオに取り込みました。

本記事に関するお問い合わせ先

オックスフォード・インストゥルメンツ株式会社
ビーテック事業部

〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町12-20
Tel: 03-4332-2138 Email
URL:https://raman.oxinst.jp

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